飲食店経営のまめ知識

飲食店の会計のお話

1【飲食店の原価を知る】

私のお店 得してる !? 損してる !?

例えば、月商150万円のお店の経費を5%コントロールできれば、年間にすると90万円もの差がつきます。
 税金や材料費、人件費、水道光熱費、諸経費etc… 正しい分析と対策で将来の経営に差がつきます!

 では、確実に利益を上げるためにはどうすればよいのでしょうか?
利益とは売上高からすべての経費を差し引いた残りの金額です。だから、売上げを大きくしていけば当然利益も大きくなっていきます。
 一見すると正しい考え方のようですが、大事なことを見落としています。それは、経費の大きさです。
 例えば、売上高が上がったとしても、それ以上に経費がかさんでいたら、利益は大きくなりません。場合によっては反対に利益が少なくなってしまうかもしれません。
 飲食店の経営は、支出と収入の繰り返しです。そこで、確実に利益を出していく為には、売上高を少しでも大きくする努力と、常に経費を適正な範囲内に収めるための管理が不可欠になります。
 大事なのは、目標利益を確保する為にはどれだけの売上高が必要で、経費はどれだけ抑えなければならないかという計数的な見通しを明確に持つことです。
 そしてその意識を持つことで、大きく経営がかわります。
 つまり、利益と売上高は比例するものではなく利益は、経営努力によって生み出すものなのです。

計数的な見通しを明確に持つとはどういうことか?

表①:原価内訳



①飲食店の原価を知る
どんなお店でも、飲食店の経営には様々な原価がかかります。そして、原価の内訳は業種や規模の大小にかかわらず、次の二つの費用に分けられます。

1. 固定費 (売上の増減にかかわらず必要になる一定の費用)
2. 変動費 (売上の増減に応じて変化していく費用)


②初期条件の見直し
 今支払っている地代や家賃、支払い金利、減価償却費を今一度見直してみましょう。
 景気や時代とともに条件も変わってきています。初期条件の負担が少なくなれば、日々の経営に余裕が出ます。


③人件費の変動費化
 人件費には、固定費と変動費の二つの面があります。社員人件費の本給と家族手当は固定費ですが、パートアルバイト費は固定する必要のない費用なので、本質的には変動費になります。
 そして、同じ変動費でも材料費は売上高の増減に比例する費用ですが、人件費は比例しない(させない)性質の費用です。
 まず、人件費をできるだけ変動費化し、曜日や時間帯で細かくコントロールすることができれば売り上げが上がっても人件費の上昇を抑えることができますし、売上げが減少したときでも経費を抑えることができます。   
 飲食店が確実に利益を生み出すためには人件費の変動費化という考え方が必要とされています。

④自店の損益計算を把握する
お店の現状を把握し対策を検討する為には、全ての費用と収益とを洗い出し営業成績を明確にする、損益計算書の作成が必要です。
 特に重要なのは、人件費と材料費を足した数字で、60~65%以内に収めないと利益の確保が難しくなってきます。この数字は一般にFLコストと呼ばれ、飲食店経営には最も大切な数字なのです。

表②:飲食店の損益計算モデル

 

2【成功する経営者の絶対条件=管理能力・管理意識】

売上を上げること、お客様に喜んでいただくこと、多くのお客様に来店していただくこと等など…経営者として必要とされることは、きりがなく存在します。
中でも、絶対になくてはならいのが「管理能力」です。
経営するということは、全てにおいての管理をするということともいえます。
今回は、その中でも重要な売上高管理と人件費管理についてお伝えします。

売上高管理
飲食店にとって最も大事な数字は売上高です。
なぜなら、それは単なる金額ではなく、お客様の支持度を表す数値でもあるからです。




お客様の満足度が売上高を決める
 売上高とは、どれだけのお客さまが自店を指示してくれたかという、その結果なのです。自店を指示してくれるお客様がたくさんいるから、また来店頻度が高いからこそ、材料費や家賃、人件費といった経費を支払うことができ、最終的に利益を確保することができるのです。それがビジネスというものなのです。
 売上高が上がっているということは、お客様の指示があるということ。つまり、お店にお客様をひきつける魅力があるということです。商品、サービス、雰囲気のそれぞれの付加価値が、多くのお客様に認められているという証拠なのです。逆に、売上高が落ちているということは、お客様が満足していないという警告です。どこに原因があるのかを早急に発見し手当をしなければ、取り返しのつかないことになってしまいます。


早期発見と対策
 一般に、飲食店の売上高は、ある時急にダウンするということはありません。毎日の売上が少しずつ落ちていき、気が付いたら大きな落ち込みになっていたということが多いのです。 したがって、経営を安定・発展をさせていくには、普段の営業の中では気づきにくい小さな落ち込みをいち早く発見し、即座に対策を講じることができるような仕組みをつくっておく必要があります。それが売上高管理です。


売上高計画の検証は毎月実施する

 いうまでもなく、飲食店の売上高は一年中同じわけではありません。必ず波が生じます。年間の大きな波は季節変動であり、業種業態や立地によって、山になる月と谷間になる月とがほぼ決まっています。
 そこで、通常、飲食店の売上高予算(計画)は月別に立てることになるのですが、これを確実に達成していくためには、毎月の売上計画と実績との対照が不可欠です。逆にいえば、この月別売上高計画の検証を毎月実施していれば、見過ごしてしまいがちな小さな落ち込みも早めに発見し、適切に対応することができるのです。

ここで大切なことは、飲食店の売上は基本的に曜日と時間帯によって変化するということです。したがって、売上高は毎日、曜日別・時間帯別に管理しなければなりません。その積み上げとして月間、年間の売上高があるのです。売上は偶然上がるものではありません。計画を立てて、かつ修正しながら達成すべきものなのです。

 

3【成功する経営者の絶対条件=管理能力・管理意識】
その② 人件費管理

売上を上げること、お客様に喜んでいただくこと、多くのお客様に来店していただくこと・・・等など、経営者として必要とされることは、きりがなく存在します。
中でも、絶対になくてはならいのが「管理能力」です。
その中でも重要なのが売上高管理と人件費管理です。
先月号の売上高管理につづき、今月号では人件費管理についてお伝えします。

正しい人件費管理で利益を確保する

飲食業の人件費率は、お店の業種業態によって変わってきます。
適正な人件費率を考えるには、お店の付加価値として、材料費との総和で考えるべきなのです。
この材料費と人件費を合わせた費用をFL(フード・レイバー)コストと呼び、55%~60%が適正(利益を確保できる)とされています。
材料費率は、メニューを決定した段階である程度決定し管理することはできますが、変動費である人件費はどのようにして決定し、管理すればよいのでしょうか?

換算人数

スタッフ数を単純に頭数でとらえていては、来客数に応じた適正な人員配置(ワークスケジュール)はできません。
人件費管理は、先ずスタッフ数を換算人数で考えることからスタートします。
換算人数とは、1日1人の標準労働時間を決めて、その標準労働時間のスタッフが何人働いたかと計算する考え方です。
(一般的に、1日8時間、1ヶ月25日、労働200時間としているケースが多い)
スタッフ数が適正かどうかは、スタッフ一人当たりの労働成果で考えます。
その基本尺度とされるのが、労働生産性です。

労働生産性

スタッフ1人当たりの粗利益高のことをさし、次の式で求められます。
労働生産性 = 月間粗利益高  / スタッフ(換算人員)数
要するに、スタッフ1人が1ヶ月にいくら稼いだかを表し、その額は給与水準と利益水準を決定します。
一般に、適正な利益確保の為には人件費の2.5~3倍の粗利高が必要とされ、これが労働生産性の目標になります。
これを人件費率の視点から見れば、粗利益高の33~40%範囲内に収められるのが適正ということになります。


労働生産性を上げる4つの方法

① 売上高を大きくする
② 粗利益高を大きくする
③ スタッフ数を減らす
④ 省力機器を導入する

人時生産性


労働生産性は、1ヶ月単位で示される数字で、月次の検討に適しているのに対し、別の尺度として1人1時間当たりの粗利益高を示す人時生産性があります。

人時生産性 = 月間粗利益高  / 総労働時間数

この目標額は、平均時給の2.5~3倍の粗利益高(1人1時間当たり)になります。

人時売上高

また、飲食店の運営で最優先されるべきはお客様の支持度である売上高です。
そこで現場管理の目標値として用いられるのが人時売上高です。
これは1人1時間当たりの売上高を示します。

人時売上高 = 月間売上高 / 総労働時間数

この数値は、高ければ高いほど良いのですが、当然のことながら客単価の高い業態の方が高くなります。
一般にパートアルバイト中心のお店の目標額は、4000円~5000円になります。

人時接客数

人の効率を管理する為には、同時に人時接客数もチェックする必要があります。
これは、スタッフ1人1時間当たりの接客数のことで、接客生産性、労働指数とも呼ばれます。

人時接客数 = 月間客数  /  総労働時間 

客単価の低いお店はスタッフ1人でサービスできる客数を増やす必要があります。

 

4【キャッシュフローと減価償却のお話】

キャッシュフローとは、減価償却費と純利益 ( 税引き後利益 ) を足した金額のことです。
要するに、手元にあって自由に使える金額を指します。

 ※ただし、実際に現金が残るかどうかは借入金の金額によります。

減価償却費は、実際の支出を伴わない費用です。

帳簿上は経費として処理されても、手元には一応その現金が残ることになります。
そして、言うまでもなく純利益も手元に残る現金になります。
そのため、通常は借入金の元金の返済に減価償却費があてられることになります。
※金利の支払いについては経費として計上することが認められています。

毎月の元金返済額によって、実際に手元に現金が残るかどうかが決まるわけなのですが、返済額が減価償却費の枠に収まらない場合は、純利益も返済額に回さなければならなくなってしまいます。
つまり、預貯金などを取り崩すことを考慮外とすると、借入金の元金を返済できる限度額はキャッシュフローということになります。
逆に言うと、毎月の返済金額がキャッシュフローを超える借入れをしてしまった場合、資金繰りに行き詰る危険性が非常に高くなります。


減価償却費

お店の内装や、厨房機器などは、何年も使用可能な固定資産となります。
それを使って、何年にもわたり、利益を生み出すことができます。
そうすると、内装工事や機器の購入をした年に一度に損金処理してしまうのは、著しく不合理ということになります。
資産の稼働期間に按分して損金として落としていくのが合理的です。
そこで税法では、建物や設備機器について、「これは何年」と一定の耐用年数を定め、その年数に従って毎年、損金処理をしていく金額を決めることになっています。
なお償却方法を選択したい場合には、税務署に届け出る必要があります。

経費に算入する為の現金は、最初の年に支払ってしまっているということになります。
経費として計上できるのに支出を伴わない為、税金のかからない利益のように考えてしまう方もいらっしゃいます。
確かに、借入金がなければ、うわべ上は現金の純粋な増加です。
しかし、最初の投資を回収するまではまだ「利益」ではありません。
また、一般的には償却期間よりも借入金の返済期間のほうが長いケースが多くなります。
キャッシュフローの余った現金はプールしておかないと、償却後の元金返済に窮してしまうことになりかねません

 

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